三池時報1966.9月号座談会


三池での社報『三池時報』収録。昭和40年代前半までは興味深いのだが、それ以降は銀行あたりの社内報のような無味乾燥度が上昇している。
この座談会は三井鉱山に配属された幹部候補生的(ではないかと推測される)サラリーマンが語ったもの。当然社内報なので、社に反発する内容があるはずがないが、社内の雰囲気を伝えている。守衛が多いのは、鉱山ならずとも三井系の社風かなと感じるところあり。
今日、同様の企画があってもここまでいろいろ注文はつけないだろう。現場に出たら、第一組合ならずとも第二組合(新労組)・職員組合など現場の人に「ようまあえらそうに」としぼられちゃうのではないか。
すでに三池争議から5年以上経っており、何かの意図があったのかと思える。
原文には実名があるが、新人社員さんは健在ならばまだ60代前半(名前をぐぐると大牟田近辺にいるひともいるようだ)で、多くは存命だと推測されるため、イニシャルに変更している。

三池時報1966.9月号より
 同年8月17日付け実習生座談会 本社にて
 出席者:
 司会:相談役
 三池配属4名:A氏、B氏、C氏、D氏、E氏
 芦別配属4名(E氏・F氏・E氏・G氏・H氏)
 砂川配属4名(T氏・J氏・K氏・L氏)
 本店:M氏・N氏
 指導員:O氏


 司会:みなさんがたは北海道実習を終わって6月16日に三池にこられたわけですが、北海道・三池と三井鉱山をつぶさにみていろんな印象を受けたり、あるいは北海道と三池を比べてのいろんな感想もあることと思います。
 今日は三池炭鉱に働いている私たちに新しい目で見られたことをざっくばらんに聞かせていただきたいと思います。まず、三池にきて第一に印象づけられたことはなんですか?

 A氏:端的にいって三池は大きくて坑内が暑いということです

 B氏:わたしも同じです。暑さには参りました。払いでも掘進切羽でもとても暑いですね。

 C氏:三池というとことはとにかくでかい山だと思いました。いい面でも悪い面でも・・・

 D氏:暑いのも暑いですが坑内が汚いですね。坑道なども水はたまっているし、材料は取り散らかしてあるし・・

 E氏:坑外に余分の人員がだぶついている感じですね。たとえば守衛などあんなに必要でしょうか。

 L氏:暑さにまいりました。

 K氏:三池に来るまで三池炭鉱が大きい山だとは聞いていましたが、港務所で貯炭をみてなるほどでっかい山だとびくりしました。

 T氏:北海道に比べると機械化は進んでいますね

 J氏:私も機械化が進んでいるとは思いますが、まだその機械を使いこなしきれずにいるような印象をうけましたね。

 F氏:機械化している割に人員が多い印象を受けました。

 F氏:芦別・砂川に比べて三池は大きく自然条件もいいんですが、そのかげに隠れている問題点が大きいと思います。

 H氏:三池は大きいといわれますが、わたしはまだその三池の大きさということがよくわからないでいます。

 G氏:あついこと、規模が大きいことなど感じましたが、もうかっているせいか、仕事上でルーズな面が多いようですね。

 N氏:わたしはみんなよく働いていると思いましたが

 M氏:私は三池の坑内に入ってまず作業環境がよくないということを感じました。それにあの貯炭の山を見て、これは大変だと思いました。

 司会;自然条件がよいということですが、北海道と比べられて自然条件がどのように違っているか、具体的にもう少し詳しく話してくれませんか?

 C氏:一番違うのは、三池が緩傾斜で厚層なのに、北海道は急傾斜で薄層だということです。それに三池には北海道のようにガスがない。ガスの変わりに水が多い。それぞれ長所短所がありますね。
 技術面からいいますと、三池は歩留まりや機械化という点では恵まれていますが、その反面、炭層が厚いため、機械化合理化の面で完全に確立されたものがないようで、この炭層にはこの採炭機械だといふものがないようです。

 H氏:北海道の炭層は約1メートル前後ですから三池のように5〜6メートルというと5−6倍の厚さですね。しかも北海道の炭層は40〜50度の急傾斜ですが、足場さえしっかり作ってあれば、立っていることに不安はありません。

 K氏:いや鉄柱や木柱があるから立っていらっれるが、下盤は硬いし何もなかったら立っていることも難しいですね。

 F氏:地質的に見て北海道の構造のほうが複雑ですよね。三池は緩傾斜で断層が少ないですよ。しかし実収率を高める意味で宮浦鉱の柱房式などを見ると残炭が多すぎますね。鉄柱の足元などに山積みされたままになっていますよ。それにベルトからのコボレ炭も多いと思います。北海道では急傾斜でもあり炭が残るということはありません。三川坑の上段払から下段の パンツァーに石炭を落とすときこぼれているのがありましたが、これなどもパンツアーの縁(木へんに縁の右側)を高くするとかちょっとした工夫で防止できるのではと思いました。

 O氏:宮浦鉱のトラフなどは敷設後の変形が多いのではないでしょうか?

 司会:三池は水が多いといわれますが、この点はどうですか?

 A氏:三川鉱はゲートの歩くところまで水につかっていましたよ。それに本層26などは雨が降っているといったかんじでした。

 M氏:作業からしてずぶぬれになるんですからね。北海道では水にぬれたら濡れ歩増しといって手当てを出していましたが三池ではそんな手当てを出していたらキリがありませんね。

 O氏:三池にも歩増しはありますよ

 司会:ではガスはどうですか?

 D氏:三池にはガスが少なく北海道にガスが多いということは炭質の問題ですから自然条件でどうにもなりませんが、北海道ではその対策にガス抜きボーリングをやっていますし、ガス警報器なども各所とりつけてありますが、ガスが多いということは発破採炭の方法などにも大きく影響しますね。

 司会:三池の施設・機械化についてはだう思いましたか?

 F氏:切羽機械の故障が多すぎるようですね。是れは機械化した後の工夫が足りないんじゃないでしょうか。それにコンベアー管理に人が多すぎるようですね。炭をはねるためにわざわざ人をつけているといったかんじでちょっと工夫が足りないといった印象を受けました。機械管理は一日だけでよくみなかったんですが、要は働く人の質の向上ではないでしょうか。
 たとえば宮浦鉱のスライシング払い(注:2段分層払い削進機?)では鉄柱・かっぺの埋没はぜんぜんないというのに、四つ山・三川では埋没が多いということですが、その辺は教育の問題ではないでしょうか。三井鉱山を支えているのは三池だという自負心があり、それはいいことではありますが、逆にそれに甘えてルーズな点が出ていると思いますよ。もっとけちくさく管理するべきですよ。

 J氏:事故に対する予防とか対策とかは当然考えられているはずですのに、事故がおきるとやはり出炭が減っていますが責任者はどう事故の対策を立てているのだろうかと考えますね。

 E氏:機械化が進んでいるといわれるが、まだ三池では機械は道具の域を出ていません。三池に来て「これは機械化だ」と思ったのは三川坑の5立方メートル炭車だけで他は期待はずれでした。

 司会;技術についての問題点はありませんか。

 B氏:技術については北海道は急傾斜で条件が違うので比べられません。

 H氏:掘進技術や枠張り、ハンマーの使い方など、三池のほうがうまいようですね

 G氏:しかし三池の枠はいいかげんにはってあるような気がしますね

 F氏:わたしは三池も北海道も大して変わらないように思いますが

 D氏:しかしとにかく三川坑の大加背はおおきいなあと思いました

 C氏:切羽管理が徹底していなくて無駄が多いようですね。鉄柱かっぺの管理にしても人の動きに無駄が多いのではないか。またパンツアー修理にも時間がかかりすぎます。1時間から2-3 時間かかっていることがあります

 O氏:パンツアーのチェーンの飛び出し、切断など修理に時間がかかるというのは故障の原因調査に時間をくうということではないですか?

 司会:さっき坑内が乱雑だという話もありましたが、資材管理の面で何か気づいた点はありませんか?

 J氏:よくものがなくなるということですが、資材を大切に使う気持ちが大切ですね。一般に機械でも道具でも乱暴な使い方をしていますし、少し壊れかかるとすぐ捨てていますね。しかしつるはしを万能機械のように使っているのには関心しました。

 司会:みなさんは三池に来られる前に三池のはなしをいろいろ聞かれたこととおもいますが、殊に労務問題で感じられたことはありませんか?

 T氏:三池にきてみて新旧労組の対立、労使関係など勉強になりました。坑内で新労員と旧労組員がけんかしたのにであいましたが、普通の中なら冗談でわらってすますようなちょっとした言葉でとうとう旧労組員がその夜新労員の自宅まで抗議しに行ったそうです。
 掲示板を見ましても執行部の指導方針がよくわかりますね。 階級闘争を指導する旧労組と生産性向上の新労組と明らかにわかりますよ。

 K氏:社内報などで旧労組のことはだいたい知ってはいましたが、入昇坑のときや休憩のときなど新旧別々に集まっていますが、やはり何かあるわけですね。仕事の面で直接気づいたことはありませんでした。

 L氏:ワタシはステーブルで旧労組と一緒に働きましたが、仕事のしぶりでも別に変わりはなかったようです。

 N氏:時間中はまじめに働いているように感じましたが、時間が来るとさっさと昇坑してしまいますね。

 A氏:入坑のとき同じ人車ではじめて三本線( 筆者注:当時、三池労組は抵抗、団結、統一を示す白い線をヘルメットに記していた)を見たときはいやな感じでしたね。

 司会:ではビルド三池づくりのため今後努力しなくてはならないことは

 M氏:まず出勤対策ですね。いくら坑内作業だからといっても出勤率が60パーセント台だというのは他産業に比べてひどいですよ。坑内にクーラーをつけても効果が上がらないという苦労もあるでしょうが、60%台の出勤率ではそれだけ余分の人員を抱えていなくてはなりません。これはぜひなんとかする必要があると思いますね。

 N氏:集約化合理化を進めていかなくてはなりませんが、通気対策にしても冷凍機をいれるだけでなく立坑でも掘るべきではないか。それと旧労の問題です。今のような消極的なことではいけないとをもいます。

 G氏:中途半端な機械化ではコストは下がりません。思い切った機械化をしてほしいですね。炭鉱はまだ経験に頼る仕事が多いようですが、将来深部に移行するようになるとこれではだめです。

 H氏:余分な人間が切羽におおすぎるようです。人を減らすのは問題があるので配置を考えるべきです。

 F氏:通気排水機械化旧労対策といろいろ解決せねばならないてんも多いのですが、今の三池でもどうしても人力に頼ってしまいますので、出勤率がなぜ悪いかを究明して改善しなくてはならないと思います。坑内という精神的圧迫と高温多湿の悪い作業環境がその原因の大きなものですから、通気対策として次の人工島を作る必要があると思います。

 F氏:三池は日本一という自然環境、施設について誇りを持っていますが、人の問題労働問題資材管理出勤管理などどれも管理が大まか過ぎますね。三井鉱山の方針が三池では従業員の個人個人に問題にされていないというきがします。これを徹底するべきです。

 J氏:いまは技術など段々専門家の傾向にあるとき、三池では機械屋採鉱屋の力が分散してしまっているようです。専門家はその専門のことをやって、そのそれぞれの力を集中させ大きな力を出すようにしたらいいと思います。いまの炭鉱はなんでもやで一人でなんでもやらねばなりません。

 T氏:まだまだ無人採鉱などできないのですから作業場の整理整頓をし炭鉱を安全な職場にするために保安に力を入れることも大事だと思います。労使関係についても旧労組のように与えられた仕事以外はしないというのは問題だと思います。機械が故障すると旧労組は仕事を休み何もしないでします。新労はそんなときでもいろんな雑作業をしています。このような状態を放置しておくことは今後禍根を残すもとになるおそれがあると思いますね。

 K氏:夏場に入って鉱員の出勤が悪くなるのは坑内条件が悪いのが大きな原因で坑内の通気対策がまず第一だと思います。それに切羽の集約化と機械をフルに使うことです。移動枠とコンベアーの間にある石炭を人間がスコップで跳ねだしているというのはちょっと工夫すれば人はいらなくなると思いますね。

 L氏:わたしもK氏と同じ意見です

 E氏:2万トン体制はいいんですがあの貯炭の山には考えさせられます。もっと銘柄をそろえて売れる石炭を掘ればいいと思います。現金に換わる石炭を出さなくてはどんなに掘っても無駄じゃないですか。量は少なくても売れる石炭だけ掘るようにすべきだと思います。なんで量産しなくてはならないかわかりませんね。

 D氏:私も出勤率が問題だとおもいます。それには働いてもなるべく疲労が少ないようにしなくてはなりません。といふことは坑内の温度を下げることで、それには通気対策が早急に解決去るべきだとおもいます
 石炭産業を安定させるためには安く石炭を掘ることにもっと工夫をするべきですね。それには何といってもコストの中で比重の高い人件費を下げ有効な資材管理をやることです。人件費の比重が大きいということは逆に言えば労働の生産性が低いということで結局は人員が多すぎるのではないでしょうか?

 C氏:炭鉱のいきる道は合理化以外にはないのですから労働者の質が問題ですね。それが積み重ねて労使関係にも影響してくると思います。労働者意識は強いが仕事に関する意識は低いというんでは出勤率に影響してくるのは当然です。その点企業の従業者としての自覚を持たせる教育が大切です。
 資材節約にしてもものを大事にする教育を徹底すべきです。いろいろ悪条件もあることですから機械化も現状に留まることなく厳しく合理化をすすめるべきです。

 B氏:作業場までの時間を少なくとも往復1時間以内に短縮するべきです(筆者注:後年もそうされなかったようである)。是は三池だけの問題ではないでしょうが、特に宮浦の人車はのろいですね。

 A氏;わたしは通気対策と労使関係だと思います。通気対策ができて出勤率がよくなればあとはある程度うまくいくと思います。

 司会:いろいろ感想や意見をきかせていただきましたがこの三池での実習結果を今後の仕事にいかして三井鉱山の推進力になっていただきたいと思います。三池で働かれるみなさんとは今後もいろいろな機械に顔を合わせ話し合うこともあると思いますが、本店や北海道に転勤される方はなかなかお会いする機会もないと思います。
 どうか元気で働いてくださるように今後の健闘をお祈りしてこの座談会を終わりたいと思います。
 長い時間ありがとうございました。